旅に出たいと思ったきっかけは?
桜の開花に期待が高まる春の日、私は旅に出た。
少し肌寒く、山道にはまだ雪が残る九州の地に足を踏み込む。冷たい空気を吸い込むたびに、これから始まる新しい時間に胸が高鳴った。
今日もまた、どこかで誰かが人の温かさに触れ、思い出を記憶と記録に残しているのだろうか。そう、私にとっての「旅」も、まさにそんな体験だった。
この記事では、「旅」に対する不安をやわらげるだけでなく、旅に出て視野や価値観を広げてみたいと願う人の背中を、そっと押すきっかけになればと思っている。
旅に出る人。旅に出たいと思っている人。まだ「旅」を知らない人。
この想いが、そんな多くの人へ届くように。
なぜ九州一周ひとり旅を選んだのか
始めに、私の「旅」を紹介する。先述した通り、私は九州の地を旅した。
とはいえ、「どこの県に行ったの?」と疑問に思われるかもしれない。
その答えは、“すべて”だ。
そう、私は人生で初めて、九州一周の旅に挑戦した。
なぜ、九州一周を選択したのか。理由はとてもシンプルで、「好きだから」だ。
英国・ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授によれば、人は1日に最大で35,000回もの選択をしているという。朝に起床すること、カーテンを開けて日を浴びること、顔を洗うこと、テレビをつけることなど、私たちは日々、無数の小さな“選択”を重ねながら生きている。
少し話が逸れてしまったが、私がこの旅に出たのも、その無数の選択のひとつだった。
その中で私は、“好き”という気持ちを選んだ。
過去に温泉地として有名な大分県や火山灰が舞う鹿児島県等へ家族や友人と訪れたことがあり、「食」や「自然」が充実していた記憶を辿って「好き」という選択肢に辿り着いた。
「旅」をするきっかけなんて、人それぞれで、私のマネをしようとしなくていい。
ただ、「旅」に対する私の思いが1人でも多くの人に届いてくれたら、それだけで意味がある気がする
旅の中で出会った“人の温もり”
九州一周旅のポイントは「車中泊」だった点だ。
電車やバスを使って、地域の景色を見ながら楽しむこともでき、車を使って移動しホテルでのんびり休むのも選択肢に置いていい。
ただ、私は車中泊で「旅」をしたいという好奇心が先に出て、挑戦した。車中泊の感想は後に述べるが、重要な睡眠のために布団やマットを妥協せずに積むのが大事ということは先に述べておこう。
早速、「旅」のスタートは福岡県だった。
早朝から通りにあったパン屋さんに寄り、朝ごはんを食べながら佐賀県に向かった。
1日目の昼頃、佐賀県に足を踏み入れ、「鹿島祐徳稲荷神社」に寄った。
少し小雨が降っており、観光客は少ないように感じたが、逆に時間をかけて神社を拝むことができ、趣味であるカメラを構えて雨粒に輝く赤き神社をフィルムに収めた。
帰り際、外国人の観光客もチラホラいて、磁器や小物、佐賀牛カレー等のお土産を見物していた様子が印象深い。


神社を出て、次に向かったのは事前予約していた割烹料理店だ。そこでは「たらふく丼」と呼ばれる、ご飯の上に角煮の揚げ物とキャベツ、海苔、紅ショウガ、半熟卵がのせてある贅沢な逸品だ。スプーンで崩れるくらい柔らかい角煮は是非、食べていただきたいグルメ!

足を運んだ観光地やグルメについて軽く触れたが、見出しにある「温もり」は佐賀県が始まりだった。
昼食を食べ終え、お会計を済ませた後に一言「佐賀の桜開花状況はどうですか?」と、尋ねた。
すると、「御船山楽園公園なら咲いている可能性がある、ちょっと待ってね、現地の人に聞いてくる!」と、電話で現地に住んでいるご友人に聞いてくれた。
様々な情報が飛び交うインターネットよりも確実な速報だった。
実際のところ、三分咲きもなっていない状況とのことで今回は断念したが、「旅」の序盤から人の温もりを感じることができ、私の心は満開になった。
それから談笑し、「今日はどこに泊まるの?」と、尋ねられた。「車中泊なのでどこかの道の駅で寝ます!」と、言うと、「えー!?もうここに泊まりな!」と、温かい言葉が返ってきた。
初対面にも関わらず、咄嗟に出る優しい言葉につい、感極まってしまった。
人の温もりは生活していく中で感じにくいものかもしれない。
だからこそ、一つ一つの言葉に耳を傾けることで、あなたの心は満開の桜のように、大きくなっていくのかもしれない。
初心者必見|車中泊で快適に過ごすための3つのコツ
はじめての車中泊旅。自由気ままな旅路のなかで、私はいくつもの失敗と学びを重ねながら、車中泊というスタイルに少しずつ慣れていった。
そのなかで「これは持っておいてよかった」「次は絶対にこうしよう」と実感した、大事なポイントをいくつかご紹介する。
1|洗面道具、忘れるな!
車中泊になると、お風呂は主に温泉や銭湯に頼ることになり、
これがまた、旅の楽しみのひとつでもある。
その土地ならではの温泉につかりながら、地元の人との何気ない会話が生まれたり、少し肌寒い日には身体の芯から温まったり。
まさに“旅のご褒美”のような時間だ。
ただし、要注意なのが「洗面道具」。
場所によっては、シャンプーやボディソープなどの備え付けが一切ないことも。
私はある日、まさにその状況に直面した。たまたま隣にいた地元の方が「よかったらこれ使って」とシャンプーと石けんを貸してくれたことで難を逃れたが、それ以来、洗面道具一式は車に常備するようにしている。
💡ポイント:
- 洗面セット(シャンプー・ボディソープ・タオル類)は必ず持参
- 小さめのポーチにまとめておくと、温泉に行くときも便利
2|布団とマットは、妥協しない
旅のなかでの睡眠は、意外と旅そのものの“質”に関わってくると実感した。
車中泊では、ベッドのような快適な空間は用意されていない。
だからこそ、自分で「よく眠れる環境」を整えることが何よりも大切だ。
私も初日は軽い毛布とマットで済ませましたが、寝返りのたびに目が覚め、翌日の移動中に眠気が…。
その反省をもとに、次の日からは厚めのマットと冬用の寝袋に変え、ぐっすり眠ることができた。
💡ポイント:
- エアマットよりも断熱性のあるキャンプマットが◎
- 季節に合わせて布団や寝袋を選ぶ
- 睡眠の快適さが、次の日の元気に直結!
3|万一に備えた「もう一手」
車中泊旅の魅力は、“自由気ままにどこへでも行ける”こと。
私は旅先の風景を肌で感じたくて、高速ではなく下道を中心に走っていました。
けれど、予想外の事態というのは、旅にはつきものです。
ある冬の日、山道に差しかかったところで、まさかのタイヤ規制。
チェーンを持っておらず、やむを得ず大きく迂回することになった。
しかも、その日は観光施設を事前予約していた日だったため、時間に追われながらの運転に。
「備えあれば患いなし」とは本当にその通りで、自由な旅こそ、余白と選択肢を持っておくことが大切だと痛感しました。
- オフラインでも使える地図アプリを入れておくと安心
- 雪道や山道を走る可能性がある場合、チェーンやスタック脱出用具は必携
- スケジュールは余裕を持って。無理な詰め込みはNG
旅の終わりに|あなたの旅も、ここから始まる
いかがだったでしょうか。
他にも、長崎、熊本、鹿児島、宮崎、大分と濃ゆく温かい旅をお届けしたいところだが、非常に濃く、温かい旅はこの記事だけには、収めることができなかった。
ただ、私にとっての「旅」と、あなたにとっての「旅」が少しは思い描けたのではないだろうか。
この「旅」は確実に私の記憶と記録には残っている。
この続きは、あなた自身が「旅」に出て、エピソードを作っていってはどうだろう。
素敵なストーリーになることを願って。