はじめに|雲ノ平という特別な場所

「日本最後の秘境」と呼ばれる雲ノ平(くものだいら)。
北アルプスの奥深く、標高2,600m前後に広がるこの高原は、登山者の間でも“聖地”と称される場所です。
今回は、僕が日本一周中に訪れた3日間のテント泊縦走
新穂高から双六岳、三俣山荘を経て雲ノ平へ至るルートを紹介します。
撮影のポイントや山小屋の情報、実際の装備リストや注意点など、これから雲ノ平を目指す方にも役立つ情報を、写真家目線でお届けします。
Day1|本格登山の始まりと稜線 新穂高〜双六小屋

登山のスタートは、新穂高温泉。朝5時、澄んだ空気の中を出発しました。
静かな樹林帯を抜け、小池新道から鏡平を経由して進むこのルートは、標高差1,200m以上。
とにかく長く、そして急登。
実はこの道は2度目の挑戦。
前回は足が攣ってしまい苦労しましたが、今回は自分のペースを守って歩いたことで、周囲の自然の美しさを余裕を持って楽しめました。
午後、標高2,552mの双六小屋に到着。

開放的なテン場と、山々に囲まれた景色に思わず深呼吸。
夕暮れには、稜線が赤く染まり、柔らかい光が山肌を包む
カメラを構えずにはいられない時間でした。
Day2|双六岳〜雲ノ平へ:天空の稜線と高原の絶景

早朝の冷え込みの中、テントを撤収し、双六岳山頂へ。
天空の滑走路と称されるこの稜線からは、槍ヶ岳を背景に雄大な景色が広がります。
その後は、三俣蓮華岳を越え、なだらかな稜線を雲ノ平方面へ。
途中、三俣山荘で休憩。木造の山小屋に差し込む光、穏やかな空気、時間がゆっくり流れる感覚に心がほどけました。
そして黒部源流を経て、雲ノ平の入り口へ。
この登りがなかなか厳しい…ですが、辿り着いたその瞬間、目の前に広がる360度の高原、風の音だけが響く静寂な世界に、疲れが一気に吹き飛びました。

ようやく辿り着いた雲ノ平。
憧れていた場所に、自分の足でこれたことに高揚感が高まります。
日没が近づくと、雲ノ平は黄金色に輝き始め、シャッターを切る手が止まりませんでした。
Day3|雲ノ平〜新穂高へ:静かな下山と心の充足

最終日、夜中の2時に起床し、満天の星の下で出発。
夜露に濡れたテントを片付け、月明かりに照らされた山々のシルエットを見送りながら歩き出します。
誰もいない静けさの中、ヘッドライトの灯りが遠くの稜線にゆらめく。
その光景に、ひとりだけど、ひとりじゃない。そんな安心感を覚えました。
帰路も長丁場。
双六小屋で軽食と仮眠を挟みながら、新穂高温泉まで戻ってきたのは午後2時すぎ。
心地よい疲労と達成感に包まれながら、山に感謝の気持ちを込めて帰路につきました。
実際に持って行った装備リスト(夏山・3日間)

テント泊用の基本装備:
- ザック:Gregory Paragon 58
- テント:MOBI GARDEN LIGHT KNIGHT
- 寝袋:mont-bell シームレス ダウンハガー800 #3
- マット:NEMO / SWITCHBACK BOREAL REGULAR
- バーナー&クッカー:SOTO マイクロレギュレーターストーブウインドマスター、NEMO
- 食べ物:パスタ、アルファ米、インスタント味噌汁、行動食(ナッツ、ドライフルーツ)
ジップロックに小分けして持っていきました。 - 水:出発時2L(現地で補給可能)
撮影機材:
- カメラ:SONY α7RⅢ
- レンズ:Sigma 35mm F1.4、Samyang 18mm F2.8
- 三脚:Manfrotto element
- モバイルバッテリー
衣類:
- レインウェア上下(GORE-TEX)
- フリース1枚、ダウンジャケット
- 長袖ベースレイヤー・タイツ・厚手靴下
YAMAPがお守り代わりに
登山中はYAMAPが頼りです。
雲ノ平のような長く険しい山行では、事前のルート確認や現在地の把握がとても重要。そんなとき頼りになるのが「YAMAP」です。
電波が入らない場所でもGPSで現在地を把握でき、地図のダウンロードや軌跡の記録も可能。実際、僕も雲ノ平ではこのアプリに何度も助けられました。山の記録を残すのにも便利で、登山がもっと楽しくなるツールです。これから登る人にはぜひ使ってほしいアプリです。
- あらかじめコースをダウンロードし、電波圏外でも現在地が把握できる
- 写真に位置情報を残せるので、撮影ログにも便利
- 小屋や水場、緊急ポイントが地図上に表示される
⛑️登山道に不安のある方は「ルート上から外れたらアラート」が出る設定もONにしておくと安心です。
季節や天候ごとの注意点
- 🌡️ 夏でも朝晩は5℃以下に冷え込む:防寒装備必須
- 🌼 高山植物の見頃は7月下旬〜8月中旬
- ❄️ 9月以降は降雪の可能性あり:特に雲ノ平は標高が高く気象が変わりやすい
- ☔ 雷や午後の天候悪化に備えて、出発は早めに
⛺立ち寄った3つの山小屋情報まとめ
山小屋名 | 標高 | テント泊値段 | テント泊 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
双六小屋 | 2,552m | 2000円 | 約150張 | 広大なテン場、夕焼けが絶景。 |
三俣山荘 | 2,550m | 2000円 | 約80張 | 木造の温かい造り。星空・朝霧撮影にも最適。 |
雲ノ平山荘 | 2,600m | 2500円 | 約50張 | モダンで静寂。360度の展望が魅力的。 |
👉 詳細情報や営業期間は各公式サイトへどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. 登山初心者でも行けますか?
A. このルートは中級者以上の方がおすすめです。1日の登山行程をもう少し短い距離にして長期間にすれば、少し経験がある方なら可能です。
Q. ソロでのテント泊は安全ですか?
A. 山小屋周辺にテントを張れば比較的安全です。不安な場合は、小屋泊やグループ登山もおすすめです。
Q. カメラがなくても楽しめますか?
A. はい。スマホでも十分美しい写真が撮れますが、夜景や星空を狙うなら三脚があるとベターです。
まとめ|雲ノ平トレッキングは、人生に残る旅になる
3日間の北アルプス縦走は、肉体的にも精神的にもハードな旅でした。
けれど、シャッターを切った瞬間の空気や光、誰もいない高原で感じた静けさは、言葉では言い表せない宝物。
これから雲ノ平を目指すあなたに、少しでも役立つ情報と勇気を届けられたなら嬉しいです。
そして、もしどこかで写真を撮る背中を見かけたら、ぜひ声をかけてください。