「海外の農場で働くなんて、素敵な体験になりそう」 そんな淡い期待と、「本当にやっていけるかな」という不安を抱えて始まった、私たちのキウイピッキング生活。
そこにあったのは、泥臭くて、ハードで、でも何にも代えがたい「青春」のような日々でした。 情報だけでは伝わらない、農園での空気感や、多国籍な仲間たちとの車中泊ライフ。
今回は、私たちが過ごした1ヶ月半のリアルな物語を綴ります。
キウイピッキングの仕事の探し方、給料や準備についてはこちらをご覧ください↓
私たちがキウイピッキングを始めた理由

もともと、将来は田舎で暮らしたいという想いがあった私たち夫婦。料理が好きで、「自分たちが食べる食材がどう作られているのか、その現場に立ってみたい」と、ファームジョブに興味を持っていました。
なかでも、ニュージーランドといえばキウイフルーツ。 「せっかくなら、その土地らしいことをしたい」と思ったのです。
キウイピッキングが盛んなベイ・オブ・プレンティという地域は、温暖で美しい場所だと聞いていました。ワーホリの開始時期がちょうど収穫シーズンの直前、2月だったこともあり、迷わずこの仕事を選びました。
リアルな1日を公開!キウイピッキングの仕事の流れ
毎朝の連絡で現場へ直行!出勤風景
毎朝6時30分ごろ、携帯が震えます。 「今日の現場はここ。8時スタートね」 会社から送られてくるメッセージで、その日の仕事場を知るのです。
私たちは会社が用意してくれたキャンプ場で、30人ほどの仲間と車中泊生活をしていました。 朝のキッチンは戦場のように混み合うので、私たちはまだ誰も起きていない5時に起床。
朝食のメニューは、味噌汁とアボカドチーズのホットサンドが定番です。朝のうちにお弁当のご飯を炊き、夜ご飯の作り置きまで済ませてしまいます。夫婦で手分けして、サバ缶カレーや、牛ひき肉を使った料理を仕込む時間。
私たちが片付けを終えるころ、ようやくほかのメンバーが起きてきます。 仕事の場所を確認したら、車中泊仕様になっている車内の荷物を移動させて、運転できるようにセッティング。 朝露で濡れたフロントガラスを拭き上げ、いざ出発。 見渡す限りのキウイ農園を走り抜け、10分〜15分ほどで現場に到着します。

ひたすら収穫!作業内容と休憩の過ごし方
農園に着いたらチェックイン。 「カンガルーバッグ」と呼ばれる、前に抱えるリュックのような袋を装着します。底がガバッと開くようになっていて、満タンになったらトレーラーに乗った巨大な木箱(ビン)にキウイを流し込む仕組みです。

チームごとのスーパーバイザーから「ここからここの列まで!」と指示が飛びます。 そこからは、ひたすらキウイと向き合う時間。 黙々と手を動かす時間ですが、チームワークも重要です。「トレーラーのある列は、早めに収穫するようにVラインを作ろう!」「背が高い人は外側の担当がいいね」と作戦を立てることも。
トレーラーの上の4つのビンがいっぱいになると、スーパーバイザーが叫びます。 「New trailer!」 するとみんなで、「Whoo!」と声を上げて盛り上がる。心がひとつになる瞬間です。
2時間半ごとに30分の休憩があります。 地面に落ちてしまったキウイは持ち帰りOKなので、車には常に大量のキウイが転がっています。それをスプーンですくって食べたり、朝淹れたコーヒーとクッキーでひと息ついたり。 7時間半ほど働く日が多かったですが、進み具合によっては早上がりになったり、逆に9時間近くになることもありました。
退勤後の自由時間と休日の楽しみ方

仕事が終わると、みんな一目散にキャンプ場へ帰ります。 理由はひとつ。熾烈な「シャワー競争」に勝つため(笑)。 30人も暮らしているのに、シャワーはたったの3つ。出遅れると長蛇の列に並ぶことになります。
夫が運転する帰り道。夕日に染まる大自然を眺めながら、「今日はあそこがきつかったね」「あのチームメイト面白かったね」と夫婦で感想を言い合う時間が、私のお気に入りでした。
シャワーを浴びたら、朝作っておいたご飯を温めて夕食タイム。 暗くなる前に車を寝るモードに戻し、あとは車内で本を読んだり、英語の勉強をしたり。
天候次第で急に休みになることもありますが、そんな日は図書館へ。Wi-Fiもあるし、なにより広くて静か。狭い車中泊生活において、街の図書館は私たちのリビング代わりでした。
正直きつい?キャンプ場での車中泊生活と労働の現実
1日2万個収穫!肉体労働の疲労感
自然と向き合う仕事への憧れもありましたが、現実は過酷な肉体労働です。 初日は筋肉痛で体が悲鳴を上げました。満タンのバッグは20kg近くになり、それが肩にずっしりと食い込みます。 計算してみたら、ひとり1日で1.5万〜2万個ものキウイを収穫していました。 ずっと上を見上げているので首も痛いし、腕もパンパン。
「これ、本当に続けられるかな……」と不安になりましたが、人間とは不思議なもので、次第に体が慣れていくのです。 それでも疲れは溜まるので、仕事終わりにはプロテインを飲んで回復に努めていました。

シャワー・キッチンは争奪戦?キャンプ場生活の不便さ
生活環境も、決して快適とは言えません。 キッチンにはコンロが2セットしかなく、夜は料理待ちの列ができます。使い方が雑な人もいて、毎朝まず掃除から始めるのが日課でした。
夜遅くまでお酒を飲んで騒ぐ声が聞こえることもあり、プライベートな空間は車の中だけ。 雨が降ればトイレに行くのもひと苦労ですし、靴の置き場にも困ります。 「屋根があって、いつでもお風呂に入れて、静かに眠れる」 当たり前だった日本の生活が、どれほど恵まれていたかを痛感する日々でした。
天候とキウイの熟れ具合に左右される休日

キウイが熟さないと、何日も休みが続くことがあります。 お金を使わないように公園でポテチを食べながら、ただ鳥を眺めて夫とおしゃべりをする。
日本で忙しく働いていたころには考えられない時間の使い方ですが、今振り返ると、そんな何もしない時間こそが贅沢だったなと思います。 たまの贅沢は、スーパーでいいお肉を買って焼くこと。外食は高くてほとんどしませんでしたが、自分たちで工夫して楽しむ生活も悪くありませんでした。

それでもキウイピッキングをやって良かった理由
協力プレイで時給アップ!多国籍チームの面白さ
大変なことばかり書いてしまいましたが、それでもやって良かったと心から思います。 その理由のひとつは、チームの一体感です。
歩合制なので、みんなで頑張れば給料が上がる。そのシンプルな目標に向かって、国籍も言葉も違うメンバーが協力し合うプロセスは、スポーツのチームのようでした。
新メンバーが入ると全体のスピードが落ちてしまうため、ピリピリする瞬間もありましたが、それも含めて人間ドラマ。歓迎会を開いて仲を深めたり、配置を工夫したり、毎日が試行錯誤の連続でした。
世界中に友達ができる!かけがえのない出会いと別れ
そして何より、人との出会いです。 毎日隣に車を停めていたドイツ人カップルとはすぐに仲良くなり、彼らが日本旅行を計画していたのでおすすめスポットを教えました。後日、お礼にと手作りのシナモンロールを焼いてくれたときは感動しました
私たちが辞めるときには、チームメイトがメッセージカードを贈ってくれ、温かく送り出してくれました。 その後、旅を続けるなかで再会したり、家に泊めてもらったり。 たった1ヶ月半でしたが、そこで生まれた絆は、私たちのニュージーランドライフを彩ってくれました。


【体験談】WWOOFへ切り替えるために辞めたタイミング
もともとは3ヶ月フルで働くつもりでしたが、私たちは途中で辞める決断をしました。 毎日8時間キウイと向き合う日々に、少し飽きがきてしまったのも事実です(笑)。
それに、私たちのワーホリの目的は「お金を稼ぐこと」以上に、「夫婦でこれからの生き方を考える時間にする」ことでした。
「もっと現地の人の暮らしに入り込んでみたい」 そう考え、WWOOF(ウーフ)という、家族と暮らしながらお手伝いをするスタイルへ切り替えることにしました。 1年という限られた時間をどう使うか。夫婦でじっくり話し合って決めた選択です。
結局私たち夫婦は、ワーホリの残り10ヶ月ほどを、ほとんどWWOOFをして過ごしました。魅力あふれるニュージーランドでのWWOOFについてはこちらの記事をご覧ください。
まとめ|キウイピッキングをやってみたい方へ

- 体力的にきつく、生活も不便だが、終わった後の充実感はすごい
- 多国籍な仲間との出会いは、一生の宝物になる
- 夫婦やカップルで一緒に挑戦するのもおすすめ
キウイピッキングは、単なる労働ではありませんでした。 大自然のなかで汗を流し、世界中の仲間と笑い合い、不便さを楽しむ。 そんな濃密な時間が、私たちの旅を、そして人生を彩ってくれました。
もし少しでも「やってみたい」と思ったなら、ぜひ飛び込んでみてください。 そこにはきっと、あなただけのキウイピッキングストーリーが待っているはずです。






