はじめに
「今日はどこに泊まろう?」
「この道の先には、何があるんだろう?」
そんな旅のワクワク感が、私はたまらなく好きです。
若い頃、バックパッカーとしてニュージーランドを一人で旅したことがありました。それが、私の旅人生の原点。「知らない場所に身を置くことの面白さ」に、すっかり魅了されたのです。
今は日本国内を、車中泊スタイルで旅しています。
宿を決めず、気になる場所へふらりと立ち寄る。出会いや発見に身をまかせる自由な旅。その魅力を、春先に出かけた長野方面での車中泊体験を通じてお伝えできたらと思います。
春先のドライブ。旅は「余白」からはじまる
春のはじまり、暖かい風が吹きはじめたある日。
私は特に明確な目的地を決めず、地図をざっと見て「長野方面へ行こう」とだけ決めて車を走らせました。
車中泊の旅の良さは、「目的を詰め込みすぎないこと」にあると感じています。
事前に調べていたのは、行ってみたい温泉がいくつかと、桜の名所がそろそろ咲き始めるという情報くらい。
あとはその日の天気や気分次第。
途中の道の駅では、地元の山菜や手作りのおやきを見つけて、つい立ち寄り小さなピクニック。
「せっかくだから川沿いでお昼にしよう」と予定外の寄り道が生まれます。
旅に「余白」があると、思いがけない楽しさが自然と入り込んでくる。
それが車中泊旅の大きな魅力だと思います。
野沢温泉村で湯めぐり。そして出会い
夕方にたどり着いたのは野沢温泉村。
まだ雪がところどころ残る石畳の道を歩きながら、温泉街特有の湯けむりと香りに包まれる時間。
ふらっと入った外湯では、地元の方が湯加減の話をしていて、自然と会話が生まれました。

「この辺の桜は来週くらいが見頃だよ」
「もっと上の方に行くと、まだまだ雪景色が見られるよ」
そんな会話から翌日のルートが自然に決まりました。
旅の中で生まれる人との出会いは、地図にもガイドブックにも載っていない情報と温かさを与えてくれます。
雪景色と春の風が混じる燕温泉

翌朝は教えてもらった情報を頼りに燕温泉へ。
登山道を少し歩いた先、白い雪が残る野天風呂に到着。
春の陽射しと冷たい風、温かな湯のコントラストが身体中に染みわたります。
こういう瞬間こそが、「旅に来てよかった」と思う一番の理由かもしれません。
季節の移ろいを肌で感じられる体験は、移動型の旅だからこそ味わえるもの。
川を掘って温泉に入る!?切明温泉での小さな冒険
今回の旅の終盤に訪れたのが切明温泉。
「川を掘ったら温泉が湧くよ」と聞き、スコップ片手に川原へ。
最初は半信半疑だったのに、じんわりと手に伝わる温かさに、童心にかえって大はしゃぎ。
即席の湯船が完成したときの達成感と、湯船につかって見上げた青空の美しさは、言葉にしがたいほどの幸福感でした。
旅先で小さな冒険をする楽しさ。
それは、目的地だけにとらわれない旅だからこそ自然に生まれるのだと思います。
旅は予定外の素晴らしさに満ちている
この春の旅でも改めて感じたのは、旅の素晴らしさは「計画通りに進むこと」ではなく、「思いがけない出来事や出会い」にこそあるということ。
車中泊旅では、その余白がたっぷりと用意されています。
急な寄り道、偶然の出会い、予定外の絶景。
そうした瞬間が、旅という経験をただの移動や観光以上の「人生の記憶」に変えてくれるのです。
これから自由な旅に出るあなたへ
もしあなたがこれから旅を考えているなら、
「少し余白を残して出かけること」をおすすめします。
- 宿を決めすぎない
- 予定を詰めすぎない
- 出会いや季節の変化に身をゆだねてみる
そんな旅のスタイルは、きっとあなたにとって新しい発見と豊かな時間をもたらしてくれるはずです。
旅の楽しさは、意外と「どこへ行ったか」よりも「どんなふうに心が動いたか」に残るものだと私は思っています。
さあ、春の風に誘われて、自由な旅へ出かけてみませんか?