【体験記】サンシャインコーストトレイルを9日間歩いた|バンクーバーからのアクセスと装備まとめ

旅のガイド
旅のガイド
ライター
Ayaka

登山歴3年で百名山90座を登り、車中泊で日本各地を旅しました。白馬でのリゾートバイトでスキーに出会い、どっぷり夢中に。現在は2回目のカナダワーホリ中。山と旅の体験を綴ります。

いつか、カナダの大自然を長い時間歩いてみたいと思っていました。

そう思いながらも、ロングトレイルを一人で歩く勇気はなかなか出ませんでした。

そんなとき、共通の友人を通じて繋がっていた、同じ時期にワーキングホリデーでカナダに来ていた女の子から

「一緒に歩きに行かない?」

と声をかけてもらったのが、サンシャインコーストトレイルを歩くことになったきっかけです。


結果から言うと、島に滞在したのは9日間、実際に歩いたのは8日間。総距離は約146km、累積標高は4,879mでした。

数字だけ見ると、それなりにしっかりしたロングトレイルですが、日本では日常的に登山をしていた自分からすると、「楽ではないけれど、想像していたよりはずっと歩きやすかった」というのが正直な感想です。

そして振り返ってみると、この9日間は、ただ歩いただけの旅ではありませんでした。

このトレイルを歩いたのは、バンクーバーでワーキングホリデーをしていた時期で、慣れない環境や言葉、思うようにいかない日々が続く中で、気持ちが落ち込むことも少なくありませんでした。
そんな気持ちをリセットするような時間で、「行って本当に良かった」と心から思える体験になりました。


サンシャインコーストトレイルとは?

サンシャインコーストトレイル(Sunshine Coast Trail/SCT)は、カナダ・ブリティッシュコロンビア州のサンシャインコースト地域にあるロングトレイルです。
最寄りの町は Powell River で、海と森、湖をつなぐようにルートが伸びています。

トレイル全体の距離は約180km。
一般的には8〜12日ほどで歩かれることが多く、北西から南東へ向かい、フェリー乗り場付近をゴールにするルートが“セオリー”とされています。

このトレイルの大きな特徴は、いわゆる「Hut to Hut Hiking Trail」であること。
トレイル上には予約不要・無料で利用できる山小屋(ハット)が点在しており、テント泊に不安がある人でも挑戦しやすい環境が整っています。

森の中を歩く時間が長い一方で、ふと視界が開けて海が見えたり、湖畔に出たりと、景色の変化が多いのもSCTならでは。派手さはないけれど、静かで奥行きのある自然をじっくり味わえるロングトレイルです。

初めて海外のロングトレイルを歩く人にも、すでに登山や縦走に慣れている人にも、それぞれ違った魅力を感じられる道だと感じました。


バンクーバーからサンシャインコーストへのアクセス方法

まずは、バンクーバーからサンシャインコースト、そしてトレイル起点までの大まかな位置関係を把握しておくと、この先の話が分かりやすくなります。

サンシャインコーストトレイルへのアクセスは、正直に言うと少し分かりづらい部類に入ります。

基本的には、

・バンクーバーからフェリーでサンシャインコーストへ渡る
・渡った先でバスや車を乗り継ぐ
・さらにアールズ・コーブから別のフェリーを利用する

という流れになり、地図を見ながら計画することが前提になります。

特に、どこをトレイルの起点・終点にするかによって移動手段の難易度が大きく変わるため、アクセスについては事前に全体像を把握しておくことが重要だと感じました。


当時(2024年4月)の移動事情と、実際に苦戦した区間

私たちが歩いたのは2024年の4月。当時はこの区間をつなぐ公共交通がなく、移動には非常に苦労しました。

Langdale(ラングデール)から Sechelt(シーシェルト)までは公共バス(BC Transit)でスムーズに移動できましたが、問題はそこから先。Sechelt から Earls Cove(アールズ・コーブ)までの区間は公共交通のサービス圏外となっており、私たちはヒッチハイクでの移動を試みることにしました。

サンシャインコースト全体としてはトレイル文化への理解がある地域で、実際に4月にも関わらずハイカーに出会う場面もありました。現地の人に話を聞くと「この区間の移動は基本ヒッチハイク」という声も少なくありません。 とはいえ、Sechelt〜Earls Cove 間ではなかなか車がつかまらず、想定以上に待機時間が長引きました。結果的に歩き始めたのは夕方近くになり、初日からナイトハイクになるという想定外のスタートとなりました。


現在(2025年時点)の情報|移動の選択肢は増えている可能性あり

一方で、2025年現在では、

  • Langdale フェリーターミナル〜 Earls Cove 間
  • Sechelt〜 Earls Cove 間

で、Sunshine Coast Connector などのバスが運行されているという情報も見られます。

ただし、

  • 1日1便程度と本数が非常に少ない
  • 曜日や季節によって運行が変わる可能性がある

といった点には注意が必要です。当時と比べると移動の選択肢は増えている可能性はありますが、実際に利用する場合は必ず最新の時刻表・運行状況を事前に確認することをおすすめします。


Lund(ランド)からトレイル起点への移動について

Lundからトレイル起点(Sarah Point Hut)への移動は、さらに特殊です。

Lund から先は一般の観光客があまり行かないエリアで、道はオフロード区間もあり、普通の乗用車では厳しい場合もあります。そのため、この区間は有料の送迎サービス(シャトル)を利用する人が多い印象でした。

中には、Lund からトレイル起点までを歩いてアプローチするハイカーもいるそうですが、距離や路面状況を考えると、事前にしっかりと計画を立てておく必要があります。


あえて逆ルートで歩いた理由

サンシャインコーストトレイルは、**北西から南東へ向かうルート(フェリー乗り場をゴールにする)**で歩かれることが一般的です。

ただ、私たちは交通手段や日程の都合を考えて、あえて逆方向(南東 → 北西)からスタートすることにしました。

トレイルを歩き終えたあと、Lund までヒッチハイクできるのか、それとも歩くことになるのか。
そこはあらかじめ決めず、「歩き終わった後の自分たちに任せよう」という、かなりざっくりした計画でした(笑)。

結果的に、私たちが終点とした Sarah Point Hut から Lund までは、ちょうど釣りに来ていた人たちに運よく車に乗せてもらうことができました。


初日はまさかのナイトハイク|暗闇の中ヘッドライトを頼りに歩く

フェリー乗り場から歩き始めた頃には、すでに空は薄暗くなっていました。

本来なら明るいうちに最初のハット(小屋)に到着する計画だったのに、想像以上に周囲は暗くなり、途中からはヘッドライト(ヘッデン)をつけて歩く完全なナイトハイクに。

森の中には街灯なんてもちろんありません。足元もほとんど見えず、木々が風で揺れる音と、自分たちの呼吸音だけが響く空間。

ようやく最初のハットに着いたとき、「ああ、無事に着けた……」とホッとしたのを今でも覚えています。

この初日の経験があるので、ヘッドライトは“あったら便利”ではなく“必須装備”だと強く思っています。


他の日のペースと、身体が慣れていく感覚

4日目と5日目は30kmほど歩きましたが、それ以外の日は、1日あたり15km前後の行程でした。

最初の数日はバックパックの重さや足元の違和感がありましたが、数日経つと体は自然と順応していきます。

足は重いはずなのに、朝になると「今日も歩こう」と思える不思議な感覚。文明から離れていくことで、気持ちが落ち着いていくのを感じました。

4月に歩いたこともあり、他のハイカーとあまりすれ違うことは少なく、静かな時間を過ごせたのも印象的でした。


一番景色が良かった山と、最高のハットの夜

サンシャインコーストトレイルは、基本的に森の中を歩く時間が長く、時々海が見える、という景色が続きます。
泊まる場所も森の中にあることが多く、正直なところ、私が思う「山で泊まる醍醐味」である朝日や夕日の絶景は、なかなか味わえずにいました。

そんな中、4日目に泊まったハットは、このトレイルの中で一番景色が良かった場所でした。
視界が大きく開けていて、夕日も朝日も両方見ることができ、ただ外に座って景色を眺めているだけで「ここまで歩いてきて本当によかった」と思える時間でした。

Tin Hat Mountain にある山小屋(ハット)

日が沈んだあとの空の色がとっても綺麗でした

そういえば、私たちが歩いた8日間は驚くほど天気に恵まれ、雨は一滴も降りませんでした。
歩いている間は「この地域はこんなに天気がいいんだ」と思っていたのですが、実は前後の日程は天気が崩れていたそうです。

あまりにも出来すぎたコンディションに、
「バンクーバーでいろいろ大変だった時期を乗り越えた、ご褒美みたいだな」
と感じたことを、今でもよく覚えています。


通行止めと、久しぶりの“満腹”

歩いている途中、トレイルの一部が通行止めになっていて、やむを得ずルートをスキップして少し早めに町へ降りることになりました。

5日ぶりに降りた町で入ったレストランは、Powell Riverでフィッシュアンドチップスが有名な The Shinglemill
ハンバーガーとフィッシュアンドチップスを友達とシェアしながら、久しぶりにお腹いっぱいになるまで食べました。

実はこの時、食料計画が少し甘く、十分な量を持ってこれていなかったのが正直な反省点。
毎日なるべく節約しながら食べ、時には友達に恵んでもらうこともありました。
だからこそ、この日の「お腹いっぱい食べる」という当たり前のことが、ものすごく嬉しかったのを覚えています。

その日は町に一泊し、翌日はスーパーで食料をしっかり補給してから、再びトレイルへ戻りました。


歩き旅のハイライト|海岸で牡蠣を獲って食べた最終日

7日目に出会ったハイカーが牡蠣を持っていて、「どこで獲ったの?」と聞くと、近くの海岸で獲れるとのこと。
ナイフがないから無理だなと思っていたら、その海岸近くのハットにナイフが置いてあると教えてもらいました。

最終日は少し寄り道をして海岸へ。実際に牡蠣を獲り、生牡蠣で味わい、ハットに戻って焚き火で焼き牡蠣に。
インスタントラーメンに入れて牡蠣ラーメンにもして、歩き旅の最後にこれ以上ないご褒美を堪能しました。

振り返ってみると、焚き火の時間も、このトレイルならではの体験だったと思います。

日本の山小屋では、基本的に焚き火は禁止されていることが多く、火を使えるとしても指定されたストーブくらい、という印象があります。

その感覚でいたので、ハットのそばにファイヤーピットがあり、普通に焚き火ができる環境には正直かなり驚きました。

※私たちは運良く体調を崩すことはありませんでしたが、野生の牡蠣を生で食べることにはリスクもあります
挑戦する場合は、時期や場所の情報を事前に確認し、自己責任で判断することをおすすめします。


ヒッチハイクで出会った人たちの優しさ

サンシャインコーストでは、ヒッチハイクを通してたくさんの人に助けてもらいました。
一人ひとりのことは今でも覚えていますが、特に印象に残っているのが、Sarah Point Hutで釣りをしていた大柄で優しそうな男性二人です。

二人は工事関係の仕事でこのエリアに滞在していて、仕事用のロッジ(いわゆる社宅のような場所)に寝泊まりしていると言っていました。
最初は Sarah Point Hutでお肉をご馳走になり、その日の夜、「今日どこに泊まろうか」と話していたところ、
「Sarah Point Hutと Lund の中間に住んでいるから、うちに泊まっていけばいいよ」と声をかけてくれました。

その晩は8日間ぶりのお風呂に入らせてもらい、翌朝は朝ごはんまでご馳走に。
さらに Lund まで車で送ってくれて、そこで私たちの旅は一区切りになりました。

歩き終えて達成感で満ち溢れていた私たちにとって、その優しさは、最後にもう一度「来てよかった」と思わせてくれる出来事でした。

ヒッチハイクで出会った人たちの優しさに、何度も救われましたが、
この二人のことは、きっとこの先もずっと忘れないと思います。


持ち物リスト|サンシャインコーストトレイルに持っていった装備

バックパックと基本装備

今回は40Lクラスのバックパックで歩きました。

  • レインウェア(上下)
  • 防寒着(タイツ+軽量ダウン)
  • トレッキングポール
  • ヘッドライト
  • ガスバーナーとクッカー
  • ファーストエイドキット
  • モバイルバッテリー
  • ベアスプレー
  • 日焼け止め
  • チェーンスパイク
  • トイレットペーパー、クラクロス(Kula Cloth)

カナダの夏は蚊がすごいので、夏に行く場合は虫除けスプレーを持っていくことをおすすめします。

トイレ事情と、女性向けのちょっとした工夫

サンシャインコーストトレイルのハットには、簡易トイレが設置されていて、トイレットペーパーが備え付けられていることがほとんどでした。
すべてのハットに必ず用意されているわけではないかもしれません。予備としてトイレットペーパーは持っていましたが、想像していたより不便さを感じる場面は少なかったです。

また、個人的に持って行ってよかったのが、クラクロス(Kula Cloth)と呼ばれるピークロス(Pee Cloth)。
女性が用を足したあとに使うための布で、洗って繰り返し使えるため、長期間歩くロングトレイルではゴミが出ないのが大きなメリットでした。

また、デザインも豊富で、可愛いものが多いのも嬉しいポイントです。
女性ハイカーには、ぜひ一度検討してほしいアイテムです。

キャンプ・宿泊装備

サンシャインコーストトレイルは山小屋(ハット)を予約なし・無料で利用できます。

今回は4月のオフシーズンだったため、テントは持たず、すべてハット泊にしました。
※念のため友達がシェルターを持参していました。

  • シュラフ(スリーシーズン用)
  • スリーピングマット
  • エアーピロー(スタッフサック等でも代用可)

夏(特に7月頃)はハットが満員になることもあるそうなので、ハイシーズンに歩く場合は軽量テントを持参した方が安心だと思います。

食料と水

  • フリーズドライ食品
  • インスタント麺・シリアル
  • 行動食(ナッツ、ドライフルーツ、チョコレートなど)
  • 浄水器(ソーヤー)
  • プラティパスウォーターソフトボトル(1L)、ペットボトル(1L)

トレイル上は海や湖が近いからか、水を補給できる場所が多く、一度にたくさん水を運ばなくても大丈夫でした。

4月に行って「本当に持って行ってよかったもの」

チェーンスパイク
標高が少し高い場所にはまだ雪が残っており、特に下りの雪渓では安心感がまったく違いました。

ヘッドライト
日の出前に行動する時のナイトハイクと、ハット内での夜の行動に必須。

軽量ダウン
朝晩の冷え込み対策として重宝しました。


トレイル計画で大事だと思ったこと

  • 初日から距離を詰めすぎない
  • 日没時間から逆算して行動する
  • 1日15〜20km前後が現実的
  • 悪天候に備えて予備日を用意する

まとめ|歩いてよかったと心から思える9日間

サンシャインコーストトレイルは、派手さはないけれど、静かで奥深いロングトレイルでした。

暗闇の中を歩いた初日。牡蠣を食べた最終日。計画通りにいかなかった日も含めて、すべてが大切な経験です。

「しんどかった」よりも、「歩いてよかった」。

そんな感覚が強く残った9日間の旅でした。

Ayaka

登山歴3年で百名山90座を登り、車中泊で日本各地を旅しました。白馬でのリゾートバイトでスキーに出会い、どっぷり夢中に。現在は2回目のカナダワーホリ中。山と旅の体験を綴ります。

シェアする
タイトルとURLをコピーしました