屋久島ひとり旅の魅力|数千年の森と命の海に出会う
人生で一度は訪れたい場所はありますか?
わたしにとって、それが「屋久島」でした。
地図で見ると、九州の南にぽつんと浮かぶ小さな島。
けれどそこには、人の手では決して創れない、圧倒的な自然の世界が広がっています。
何千年も生きる屋久杉、苔に覆われた深い森、雨に濡れて輝く岩や水の音
そのすべてが、時間の流れさえも忘れさせてくれるような、静かで力強い気配を放っています。
1993年に「日本初の世界自然遺産」として登録されたこの島に惹かれるのは、ただ景色が美しいからではありません。
自然と向き合うことで、自分自身とも静かに向き合える場所だと感じるからです。
忙しさに追われ、気づかないうちに見失いかけた自分を、屋久島の深い森の中で、もう一度取り戻したいと思いました。
圧倒的な自然に包まれながら、ただ静かに呼吸する時間――
それが、今のわたしにとって何より必要なもののように思えたのです。
そして私は決めました。
この島に行くなら今だと。
なぜ今、屋久島ひとり旅を選んだのか?
屋久島にある縄文杉に会うには、往復22km、約10時間のトレッキングが必要です。
標高差もあり、途中はぬかるみや急な登りもあります。
誰かに連れて行ってもらうような旅ではなく、自分の足で、意志を持って向かう場所。
行くなら体力のある今のうちに。
そう思い、初秋の9月に2泊3日の一人旅を決行しました。
一人での旅にしたのは、できるだけ自分の心に集中したかったから。
自然と向き合う時間を、自分ひとりで浸りたかったのです。
【1日目】ウミガメの孵化体験|屋久島の海で出会った命
島に着いたその夜、ウミガメの保護活動をしている永田いなか浜という浜辺で、ウミガメの孵化を見守りました。
星が降るような夜でした。
耳をすませば、波の音と、遠くで鳴く虫の声だけが響いている。
その静寂の中、砂の中から生まれたばかりのウミガメの赤ちゃんたちが、小さな手足で懸命に砂をかき分けて、海を目指して進んでいきます。
ウミガメは、生まれてからすぐに「生きるための旅」が始まります。
生存率はわずか5000分の1だそう。
まだ海を知らないはずのウミガメの赤ちゃんが、真っ直ぐ海に向かっていくその姿には、ただひたむきな強さがありました。
わたしは祈るような気持ちで、波に飲まれていくその背中を見送りました。
【2日目午前】白谷雲水峡トレッキング|静けさと緑に包まれて
早朝、白谷雲水峡へ。
あたりはまだ霧がかかり、森全体が深い呼吸をしているように見えました。
足元には、ふかふかとした苔のじゅうたん。
水は音もなく流れ、木々の枝には無数の雫が、まるで宝石のように光っています。
白谷雲水峡は『もののけ姫』の舞台になったとも言われる場所。
けれど実際に訪れてみると、ジブリの世界に近いというより、ジブリでさえ描ききれない「本当の森」がそこにあると感じました。
途中、野生の鹿に出会いました。
人を恐れることもなくそっと近づいてきて、しばらくじっと見つめ合いました。
言葉はなくても何かが交わされたような、そんな瞬間でした。
【2日目午後】屋久島のシュノーケリング体験|海の命との出会い
午後はスキューバダイビング
屋久島は森が豊かな緑のイメージが強かったので、この島の海も知りたかったのです。
海に潜ると、視界いっぱいに広がる青の世界。
水の音がすべてを包み込み、現実の喧騒は遠ざかっていきます。
そして、大きなウミガメに出会いました。
この子は海で頑張って生き抜いてきたんだなと、思わず心がぎゅっとなりました。
ウミガメが穏やかな瞳でこちらを見つめて、わたしが差し出した海藻をゆっくりと食べてくれたとき、どこかでその心がふっと解けるような気がしました。
森でも海でも、動物たちが歓迎してくれているようで。
それだけで、この島に来た意味があったと、そう思えました。
【3日目】縄文杉トレッキング|屋久島の神秘に触れる
朝5時。宿の人が持たせてくれたおにぎりをリュックに入れ、縄文杉への登山口へ。
トレッキング初心者のわたしは、準備は全てレンタル。
まだ夜の名残を感じる中、歩き始めます。
トロッコ道をひたすらに歩き、徐々に傾斜がきつくなっていく。
汗をかき、息が上がっても、道は静かに先へ先へと続いていました。
途中「ウィルソン株」と呼ばれる巨大な切り株の中に入り、上を見上げると、ハートの形をした空が。
不思議と明るく温かい気持ちになって、優しい風が抜けていきました。
そしてさらに進んでいくと、ついに目の前に現れたのが、縄文杉。
大きい。とにかく圧倒的に、存在が「大きい」。
スマホのカメラにはとても収まりきらず、その姿を目に焼き付けようと、ただ静かに、しばらく立ち尽くすしかありませんでした。
何千年も前からこの場所で、ひとつの命が生き続けているということ。
それがどれだけ奇跡的で、尊いことなのか。
言葉にしようとしても、言葉が追いつかない感覚が、確かにありました。
屋久島グルメ|地元食材と海の幸を楽しむ旅
3日間通して、島の恵みを食事でも。
トビウオに、首折れサバのお刺身。
屋久鹿のジビエも、自然の味がまっすぐ感じられて。
そして、縄文杉へ向かう途中で汲んだ湧水を煮沸してもらって割った、地元の芋焼酎「三岳」。
これほどの贅沢はないでしょう。
どれも心身に屋久島が染み渡るのを感じながら、大事に大事にいただきました。
屋久島ひとり旅の締めくくりに|心が還る静かな時間
屋久島は、言葉を失うほどの濃密な自然と、すべてを静かに受け入れてくれる深い懐のような場所でした。
ひとつひとつの出会いが静かに心に残り「行ってよかった」では言い尽くせない、特別な記憶となっています
人生で一度は訪れたい
そう思って足を運んだ島で、私は人生の中で何度も思い返すであろう風景に出会いました。
心がざわついたとき。
何か大切なものを思い出したいとき。
あなたもぜひ、自分だけの景色に出会うために。
屋久島を訪れてみてください。
あなたの感性にそっと寄り添い、心に深く静かに響く時間があなたを迎え入れてくれるでしょう。
屋久島へのアクセスまとめ
屋久島へは主に「飛行機」「高速船」「フェリー」の3つの方法があります。それぞれにメリットがあるので、旅のスタイルに合わせて選びましょう。
飛行機 | 鹿児島/大阪(伊丹)/福岡 | 約40分〜1時間10分 | 最速・快適。JAC便で直行。便数が少ないため早めの予約がおすすめ。 |
高速船(トッピー・ロケット) | 鹿児島本港(南埠頭) | 約2時間 | 揺れが少なく快適。スケジュールも比較的豊富。 |
フェリー(屋久島2/はいびすかす) | 鹿児島本港(南埠頭) | 約4時間(または夜行) | ゆったり船旅を楽しみたい方に。荷物が多くても安心。 |